風力発電はクリーンだからといって、どこにでもつくって良いの?

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法律・制度関係Information

風力発電事業にかかわる法律や制度に関して抑えておきたい情報をご紹介します。
最初から全てを理解する必要はありませんが、風車問題に取り組む際に知っておきたい情報をまとめています。
(※ただし、法律や制度は日々あたらしく更新されていくため当ページの情報も古くなっている可能性もあります。本ページの情報を参考に、最新のものが公開されていないか管轄の省庁が発信している最新情報を確認してみてください。)

再生可能エネルギーの普及に関する法律

再エネ特措法

再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法【2012年7月施行】

【目的】再生可能エネルギーの普及を目的とした法律で、その屋台骨は『FIT制度(固定価格買取制度)』と呼ばれるものです。再生可能エネルギーで発電した電気を国が定めた一定価格で買い取ることを約束し、事業者を金銭的に支援することで再エネの加速度的な普及を図るための制度としてはじまりました。

【概要】 固定価格で買い取るための原資は『再エネ賦課金』と呼ばれ、国民が月々の電気利用量に応じてる徴収されており、2025年度は標準的な家庭で年間19,104円の負担と試算されています。
 国が当初想定していた金額をはるかに上回るペースで再エネ賦課金が高騰したために2022年に制度の見直しが行われ、固定価格で買い取るFIT制度から、電力需要に合わせた供給に金銭的なプレミアムを乗せる『FIP制度』へと変更になになりました。

【活動者へのアドバイス】 もし風車問題に対して地域で活動される方はFIT制度の基本的な仕組みや固定買取価格や再エネ賦課金の変遷を理解しておくことはしておいた方が良いでしょう。一方で、FIP制度はやや複雑でありその仕組みまで詳しく理解しなくても問題はありません。

再エネ特措法

2011年3月の東日本大震災の原発事故を受けて、「脱原発のために再生可能エネルギーを普及させる」という社会的な空気が高まっていた2011年制定されました。現在でもそのように考えている人も多いですが、制定から10年以上が経過する中で、国が考える再エネ普及の主目的は「温室効果ガス削減」「エネルギー自給率の向上」となっており、経済産業省のHPを見てもエネルギー基本計画を見ても、「脱原発のために再エネ普及」とは一切謳われていません。

農山漁村再生可能エネルギー法

農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律【2014年5月施行】

【目的】 売電収益の一部を地元の農林漁業者に還元することで、農地や森林や海といったこれまで一次産業の生産地として法律で守られてきた場所に再エネを普及させやすくするための制度です。

【概要】 地方自治体(市町村)が主体となって『協議会』を立ち上げて、その協議会に再エネ事業者をはじめ、地域の農林漁業者(農協、漁協、森林組合、生産組合など)や、地元自治会、学識経験者に参加を募り、当該風力発電事業に関して協議会で『基本計画』を作成します。そうすることで、地域の農林漁業と調和の取れた形で再エネ事業を進めることを目指す制度です。協議会で基本計画をまとめるなかで、、再エネ発電の利益を地域に還元する「農林漁業の健全な発展に資する取組」を行うこと決められており、売電収益の一部が地域の農林漁業の振興や周辺環境の整備などに充てられます。再エネ事業者にとっては、農地法や森林法、自然公園法、漁港漁場整備法等7つの法律の手続をワンストップ化(手続きの簡素化)ができるというメリットがあります。
【活動者へのアドバイス】 全ての事業がこの制度を使用するわけではないので、当該事業が農山漁村再エネ法を使用する予定かどうかを事業者に確認しましょう。農山漁村再エネ法を使用する場合は、“地元市町村が主体となって”協議会を立ち上げる必要があるため、市町村に対して主体的に協議会を立ち上げを行わないように要望を行うことも大事です。

農山漁村再生可能エネルギー法

再エネの収益の一部を地域の農林漁業者へ還元することで地域と共生した再エネの普及を図るという理念は素晴らしい制度ですが、実際の運用においては、風車建設によってデメリットを受ける直下の集落の反対を置き去りにして、協議会で集まった各種団体が金銭的な恩恵を受けるといういびつな運用がなされていたりします。

環境アセスメント

環境影響評価法

【目的】 規模が大きく環境への影響が著しくなるおそれがある事業について、環境影響評価の手続を定め、関係機関や住民等の意見を求めつつ、環境影響評価の結果を許認可等の意思決定に反映させることを目的とした制度です。

【概要】 風力発電の場合は出力5万kW以上の事業が対象となっています(各県の条例によって対象の規模はそれより厳しい場合もあります)。事業者はまず、文献調査などをもとにした『配慮書』を作成し「配慮書の縦覧(1ヶ月間)」と「住民説明会」と「意見書(市民および地元市町村長意見)」の提出が行われ、それを受けて県の環境影響評価審査会で審議されて『県知事意見』が出され、国の環境省へと手続きが進み『環境大臣意見』が出され、最後に経産省で『経産大臣意見』が出されて1つのプロセスメントが完了します。以降は『配慮書』⇒『方法書』⇒『準備書』⇒『評価書』という4段階の手続きを経て事業に着手できるようになります。基本的には各段階で行われる手続きは同様のものですが、一般市民が意見を出すことが出来るのは『準備書』の段階までです。

【活動者へのアドバイス】 環境アセスメントについては風車問題に対応する上でとても重要ですので、必ずどのような制度なのかを詳しく調べて勉強してください。ネットで調べることが出来ます。ただし、日本の環境アセスメントは事業の中止を命令できるような制度になっていないため、環境アセスメントの手続きによって事業が中止になることはほぼありません(100%に近い確率です)。ですので、地元の行政担当や市長などが「環境アセスメントの進捗をまって判断したい」といったり、事業者が「問題があれば環境アセスメントで指摘されるので大丈夫です」といっても鵜呑みにしてはいけません。

環境アセスメント

日本の環境アセスメントは、別名「環境アワスメント」と揶揄されていたりします。例えば各分野の専門家から指摘があったとしても、事業者は「○○への影響が極力少なくなるように事業を進めて参ります」「最大限配慮します」といった回答するだけ事業が進められてしまうような制度になっているという問題点が以前から指摘されています。

保安林解除

森林法

【目的】 山の保水力を維持し洪水の防止を目的とした『水源かん養保安林』や、土砂災害の発生を防ぐための『土砂流出防備保安林』といったさまざまな目的に応じて17種類の保安林のどれかに指定されます。一番多いのは水源かん養保安林です。

【概要】 風力発電の計画地の多くは、『保安林』に指定されているケースが大半です。従来は保安林に指定されている地域は開発が厳しく制限され、木を一本切るだけでも規制がかかるほど厳しく森が守られてきました。それにも関わらず、現在は再エネ普及のために著しく制限が緩和されていることが問題となっています。
 保安林指定解除の権限はおおまかには、国有林の場合は大臣、民有林の場合は都道府県知事となっています(例外あり)。事業計画地がどちらにあたるかによって相談や交渉する窓口も変わるので早い段階で行政に確認すると良いでしょう。

【活動者へのアドバイス】 大半の事業が保安林にしていされている森林に計画され、保安林解除の手続きを経て建設されます。その解除手続きの際に必要な添付書類の中にとして、『地元市町村長の意見書』や『直接の利害関係者の意見書(地区の代表者の意見書で代替可)』があります。そのため、市町村長や自治会などが建設反対の意見を表明することは大きな力となります。風力発電建設の際の保安林解除の手続きに関しては、林野庁が出している『保安林の指定解除事務等 マニュアル(風力編)』が要点を網羅しているので、必ず目を通してください。

保安林解除

風力発電を建設する際は、風車が立つ『風車ヤード』と風車を搬入するための『作業用道路』の2つの用途で山が削られます。このうち、現在の国の法律運用では、保安林解除が必要なのは『風車ヤード』だけで、『作業用道路』に関しては保安林解除を行わなくても良いという規定になっています。保安林解除が行われる風車ヤードに関しては、保水力の低下などを補う代替施設の設置が検討されますが、作業用道路に関しては保安林解除がなされないため風車ヤードと同様に山を削るにも関わらず、代替処置が不要という扱いになっています。

航空障害灯

航空法

【目的】 航空機の航行の安全を目的として、地表又は水面から60m以上の高さの物件には航空障害灯の設置が義務付けられています。

【概要】 航空機が風車に衝突することを防ぐため、10km以上離れた距離からも視認できる強力な光を発する照明の設置が必須とされており、色や光度、設置数などの規定が定められています。風力発電に関してはその普及促進の観点から緩和規定が設けられています。

【活動者へのアドバイス】 緩和規定に関しては年々大型化する風力発電機に合わせて変化しているので、その時点での最新の情報を調べられることをお勧めします。

航空障害灯

過去には風車間の距離によって航空障害灯の設置は2基毎に1つで良いといった緩和処置がとられたりしましたが、緩和規定は日々変化しているようです。

土砂災害警戒区域等

土砂災害防止法(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律)【2001年施行】

【目的】 土砂災害のおそれのある区域について土砂災害警戒区域等に指定し、危険の周知や住宅の新規立地の抑制、既存住宅の移転促進等の対策を推進しようとするもの。
【概要】 1999年に広島県で起きた集中豪雨による土砂災害を機に制定されました。斜度30度を超す急傾斜地の崩壊や、渓流の土砂を巻き込んだ土石流の発生、山腹の地すべりなどの危険が高い箇所を「土砂災害警戒区域」「土砂災害特別警戒区域」に指定しています。


【活動者へのアドバイス】 「土砂災害警戒区域(特別警戒区域)」はハザードマップに記載されていたり、地区内に看板が建てられて周知されているため、地区に住んでいる方も把握していることも多いです。ただし、基本的には人家の周辺しか指定されていないため風車の事業計画エリア内には指定区域がない場合も多く、「指定されていないから安全だ」と主張する事業者もいるため要注意です。

土砂災害警戒区域等

「土砂災害警戒区域(特別警戒区域)」は、現に人家等があって人的被害の発生の可能性があるような箇所しか基本的に調査されていません。つまり、指定されていないからといってその場所が安全であるというわけではありません。特に風車が計画されるような山の尾根付近に関しては、ただ単に人家がないため調査されていないだけである可能性が高く、指定されていないからといって安全であることの裏付けにはなりません。

山地災害危険地区

山腹崩壊危険地区/崩壊土砂流出危険地区/地すべり危険地区

【目的】 山崩れ、土石流、地すべりなどによって人家や公共施設に被害が及ぶ可能性のある場所を、地形や地質などの状況から調査・把握し、災害の発生を未然に防ぎ住民の安全を確保するものです。

【概要】 山腹崩壊によって被害を与えるおそれのある地区を指定する『山腹崩壊危険地区』、地すべりが発生するおそれがある区域のうち公共施設に被害を与える地区が指定される『地すべり危険地区』、山腹崩壊や地すべりによって発生した土砂などが土石流となって流出し被害を与える危険のある『崩壊土砂流出危険地区』の3種類があります。

【活動者へのアドバイス】 山地災害危険地区の3つの地区の指定状況に関しては、環境省が作成している『環境アセスメントデータベース(EADAS)』のサイトからマップ上で確認することができます。EADASを開き、レイヤーの「表示設定」→「全国環境情報」→「社会的状況」→「防災関連情報」→「山地災害危険地区(国有林)/(民有林)」の『追加』ボタンを押すと、地図上に表示されます。

山地災害危険地区

山崩れ、地すべり、土石流といった災害の危険性があるということで地域指定されていますが法的な根拠に基づいて規制がかかる制度ではないため、地域指定されていたとしても風車建設を法的に規制するものではありません。つまり、山地災害危険地区にしていされていて現に危険があると行政が認めている一方で、行政が法的に建設を中止させる根拠になるものではないため、もし災害が発生した場合に被害を被る地域住民自らが、この情報に基づいて土砂災害の危険性を認識し、風車建設の中止を求めるなど自主的に地域を守る活動を行わなければ地域が災害の危険性に晒される可能性が高まることは間違いないでしょう。