風車問題に取り組む前に、はじめに知っておきたいことInformation
はじめに
再生可能エネルギーの普及を促進するという国の方針により、全国の山間部にとめどなく風力発電の事業計画が持ち上がっています。
残念ながら現在の日本の法制度は、再エネで発電した電気の買取価格を上乗せして経済的なメリットを生むことで、民間の投資によって再エネを普及させる方針をとり続けているため、本来の「自然環境を守るために再生可能エネルギーを普及させる」という本来の目的を見失っています。そのため、絶滅危惧種の動植物が生息していても、人家のそばで騒音の被害を生じさせても、『山地災害危険地区』といった土砂災害の危険があるような場所であっても、ただ収益性のみを追い求めた自制の効かない事業が蔓延してしまっています。
もしもあなたの住む地域に風力発電事業が計画された場合、足もとの地域にさまざまなデメリットを生じさせる可能性があったとしても、法律は事業を止めてくれるようには整備されていません。地域の自然環境と住環境を守るためには、地域に住む住民自らが地域を守るために行動するしかないのが現状です。
反対活動について
もしあなたが地域を守るために行動しようと思ったら、それは一般に『反対活動』と呼ばれるものになります。しかし、なにかに『反対』するという活動に自分が乗り出すことに抵抗を感じたり、戸惑う気持ちを抱く方も少なくありません。かくいう私たちもそうでした。「できれば反対活動などやりたくない」と思うのはとても自然なことです。しかし、誰も動かなければ地域が一方的に侵されるのをただ見すごすだけになってしまうのは火を見るよりも明らかです。そんな時は少し目線を変えてみてください。
これからみなさんが取り組もうとしていることの本質は、風車に『反対』するためのものではありません。それが風車であろうとなんであろうと、地域や集落にとって問題のある開発から地域を“守る”ための活動をしようとしているのです。さらに言えば、今ある豊かな自然や穏やかな住環境が今のままあり続けることに賛同するものであり『賛成』する活動なのです。そうした少しの意識のもち方の違いが、みなさんが活動する過程での考え方や話し方、行政や事業者との折衝の中でも、また自分自身の活動を立ち止まって考える時にも、小さな違いとなって現われてくると思います。短くても半年~1年、通常なら2年や3年、長ければ5年も10年も携わることになる活動です。反対というものの見方と意識だけでそれを継続し続けることはそれぞれの人生にとって負担となってしまいます。何を大切にし、何を守るために活動しているのかに目を向けることをお勧めします。
ステレオタイプに陥らないこと
いざ地域を守るために活動を始めようとしたときに注意したいのが、「反対活動」のステレオタイプのイメージをなぞることです。たいていの人はこれまでの人生で反対活動などやったことがないため、まず何をしたら良いのか分からず悩みます。そして何となくこれまで新聞やニュースで見てきたような反対活動のイメージを頭に思い浮かべ、「署名を集めよう」「チラシを配ろう」「のぼり旗を立てよう」といった案に辿り着きます。また今まさに当団体のWEBサイトをご覧になっているように、ネットで調べて知った風車に関するさまざまな問題点を地域の中に周知しようと動きはじめるかも知れません。しかし、その動きをぜひ一度立ち止まってみてください。
なぜなら、要点を抑えずにただ頭に思い浮かんだ反対活動のイメージをなぞってがむしゃらに行動することは、時間やお金といったリソースを消費するだけで“結果”に繋がらない徒労になってしまいがちだからです。そうではなく、「この事業を止める権限を持っているのは誰か?」「どういう状況を作れればこの事業は中止になるのか?」「法的に止めることが出来る可能性があるポイントはどこか?」といった、確実に中止に繋がる可能性のあるルートを見定めて動いてください。
これからみなさんが対峙しようとしている風力事業者は、何百億の単位の巨大な事業を実現させようとしており、人的資源や知的資源といったリソースが市民の活動と比べて桁違いです。そのような巨大な相手に対してごく限られたリソースしか持ち合わせない市民が地域を守り抜くためには、しっかりと戦略を練って、要点を抑えたなるべく無駄のない活動をすることが欠かせません。また、一人一人の持っている資源は小さくても、地域の賛同者を増やしてそのネットワークを活かすことで対抗することがとても重要になります。ですから、何となく頭の中に思い浮かんだ反対活動のイメージを一度横に置いて、自分たちの地域のこの事業を中止させるために効果のあるポイントは何か?そのために必要な活動は何か?ということをしっかりと考えて動いて下さい。
思い込みで対立を生まないこと
また、自分たちの活動が正義だと決めつけて、地域の中で風車に反対しない人や賛成しようとする人を対立者だと決めつけないようにも気を付けて下さい。先ほども書いたように風力発電の事業は何百億にも及ぶ巨大なお金が動く事業であり、地域の中にはその方の仕事や職業によってその恩恵を受ける方々が生じるのは間違いありません。また、一円にもならない負債だと思っていた山林を、事業者がお金を出して借りてくれてありがたいという土地所有者の方もいるかもしれません。地域の中ではそれぞれの立場でそれぞれの事情があり、反対の方もいれば賛成の方も生じてきます。最初からそういう方々と壁をつくり対立するのではなく、相手の立場も理解した上でこちらが危惧していることや考えていることを理解して貰う努力をすること、地域にとって最良の結果を導き出せるように落ち着いて行動することをお勧めします。
賛同者を増やすこと
風力発電問題へ活動するなかで重要になってくるのが、賛同者を増やすことです。地域を開発から守るためには、高い危機意識を持った少数の活動者の声だけでは止めることが出来ません。集落や自治会、議会や行政といった地域のさまざまな立場のたくさんの方々の賛同を得ることで、なんとかようやく中止を引き出せるというケースがほとんどです。その際、「風車って何が問題なの?」「クリーンエネルギーだから良いんじゃないの?」といったような、賛成でも反対でもないといった方々に正確な情報を知っていただいて、地域の中で賛同者を増やして行かなければなりません。その際、活動者であるあなた方の行動や発言が地域の多くの方々から見られて評価されます。あまりに過激な活動であったり、客観的に聞いて無理筋の主張を繰り返すようなことがあれば、地域の多くの方々はあなた方の活動に賛同するどころか、あなた方の活動から遠ざかっていってしまいます。自分たちの言動は地域の中で賛同者を増やすことができるものになっているかを、いつも意識して行動するように気を付けて下さい。
最後に
以上のことは、私たちが10年以上に及ぶ活動の中で、自らの失敗やさまざまな地域の事例を見る中で気付いてきたことです。このような活動を行うのは初めてだという方の参考になることを願っております。ここで書いたことは最低限お伝えしたい程度の内容であり、このWEBサイトの情報だけでは伝えきれないこともたくさんあります。また、当サイトの情報がいくらか役に立ったとして、実際に活動する戦略や戦術を練る段階で具体的な作戦のアイデアが思い浮かばないこともあると思います。そういった場合には、一度メールや電話でお問い合せください。活動初期に皆さんが悩むであろう問題に対して、私たちがサポートできることがたくさんとあると思っています。残念ながら私たちえひめ風車NETのメンバーが住む地域では、いくつもの風力発電事業が建設されてしまいましたが、私たちの経験を元にサポートさせていただいた地域ではいくつもの事業の中止を引き出すことが出来ました。自分たちの地域を守ることができなかった私たちの後悔と反省をぜひ活かしていただき、同じような悲しい思いをする地域が生まれることを一つでも防ぐことができればと思っています。
